メールマガジン第53号

全国盲ろう者団体連絡協議会メールマガジン第53号

2022年2月15日発行

全国盲ろう者団体連絡協議会(以下、「連絡協議会」という)

<目次>

1.会長からのメッセージ

会長 大杉 勝則(おおすぎ かつのり)

コロナ第6波到来。
いつどこで感染してもおかしくない世の中になってしまいましたね。
みなさん、いかがお過ごしでしょうか?
広島の友の会では、1月8日の新年会を前日に急遽中止し、2月いっぱいは、すべての活動を休止せざるを得ない事態です。
派遣や同行援護も、長時間の外出や飲食を伴う外出を控えてもらったり、買い物や病院以外は、なるべく遠慮していただくよう、感染対策としてお願いしているところです。
全国のみなさんも同じようにつらい思いをされている と思います。
本当に1日も早くコロナが収まり、ふだんの生活に戻りたいものですね。
とにかく、コロナに負けないで、大変なつらい状況を乗り切りましょう!

2.盲ろう者の参政権保障をめざして

事務局長  庵 悟 (いおり さとる)

 昨年(2021年)の6月15日発行のメルマガ第50号の『みんなの広場のコーナー』で、村岡美和さんから「盲ろう者の選挙投票所について考える」の投稿がありました。
 その後、9月に、兵庫盲ろう者友の会様から、選挙時における通訳・介助者の扱いについて、公職選挙法の改をを求める要望が出されました。これをきっかけに、主に投票所における困ったことを中心に、全国の盲ろう者や支援者の皆様から多くの事例や意見を寄せていただきました。
 10月31日の衆議院総選挙の期日前投票などの投票所において、通訳・介助者の同行が認められなかった事例を中心に、12社の新聞記事に掲載されるなどマスメディアで大きくとりあげられました。
 そして、当時の磯崎仁彦官房副長官が10月29日の記者会見で、「視覚と聴覚に障害がある盲ろう者の衆院選期日前投票を巡り、東京都内の投票所で一時、介助者を付き添わせない不適切な対応があったことに関し「政府として投票現場で適切な対応がなされるよう必要な取り組みを推進する。障害のある有権者が円滑に投票できる環境を整えることは極めて重要だ」と表明されました。
 そこで、衆議院総選後に発足した第二次岸田内閣が発足されていますが、この問題をうやむやにしないためにも、改めて、盲ろう者の参政権について、盲ろう者、支援者の皆様から情報提供をいただきました。
寄せていただいた皆様には心より感謝申し上げます
 こうしたことを踏まえ、連絡協議会として、全国盲ろう者協会と連携し、総務省や自治体などに要望していく準備を進めております。
 以下、要望のたたき台をつくってみました。

【要望1】 
 盲ろう者の投票における困難の改善のための配慮をお願いします。
(要望の理由)
・盲ろう者は、その障害の発生時期や程度などにより、触手話、指点字、手のひら書きなどと、コミュニケーション手段が各々で異なります。盲ろう者と選挙管理委員会の係官とのコミュニケーションにおいても通訳・介助員の介在が必要です。
 公職選挙法第58条第3項にもとづき、投票所において、選挙人である盲ろう者が投票行動の際に係官との意思疎通を円滑に進め、自らが投票する権利を行使するため、通訳・介助員が同行できるよう、各都道府県および区市町村選挙管理委員会に周知徹底をはかってください。
・公職選挙法第48条第2項を改正し、自分で投票用紙に記入できない盲ろう者が同行する通訳・介助員による代読・代筆による支援が受けられるようにしてください。
・候補者一覧の点字版とともに、拡大文字版を用意してください。
・いつでもどこでも点字投票が円滑にできるようにしてください。

【要望2】
 盲ろう者からの求めによって、各盲ろう者の情報取得手段に応じた選挙公報、政見放送等の情報提供を行ってください。
(要望の理由)
 盲ろう者は目と耳の両方が不自由であるため、テレビ、ラジオ、新聞等を利用することができない者が少なくありません。その結果、選挙公報、政見放送といった選挙に関する情報を得ることができず、候補者の誰を選ぶべきかの判断が難しくなります。そこで、次のような方法により、改善策を講じてください。
(1)選挙公報について
・盲ろう者のニーズに合わせて、選挙公報の拡大文字版、点字版、デイジー版、電子データ版(テキスト版など)の配布をしてください。
・上記媒体の利用が難しい盲ろう者に対しては、選挙管理委員会の責任において、盲ろう者宅を訪問し、選挙公報の内容を情報提供する通訳・介助員の公費派遣を行ってください。
(2)政見放送について
・すべての政見放送をテキストデータ化し、点字ディスプレイや拡大読書器およびメールなどでその情報を取得できるようにしてください。
・手話通訳や字幕を見やすくする。
・盲ろう者からの求めがあった場合、選挙管理委員会の責任で、盲ろう者に対し、地域の実情に応じて、政見放送の内容を情報提供する通訳・介助員の公費派遣を行ってください。
以上です。

 このたたき台について、修正意見などがございましたら、ぜひ事務局までお寄せください。

3.連絡協議会活動報告

ア.盲ろう者が少しでも安心して生活できるように

副会長 藤鹿 一之(ふじしか かずゆき)

 2022年、年明けと同時に、新型コロナウィルスの感染者が爆発的に増えました。
 皆さんも、再び、活動しにくくなったのではないでしょうか?
 連絡協議会では、以下の2つのことを行っています。

 1、盲ろう者が独力で測れる体温計の開発

 連絡協議会では、ウィズコロナ社会で、少しでも盲ろう者が安心して暮らせるよう、便利グッズ開発ワーキング グループを結成しました。もちろん、連絡協議会の役員には便利グッズの開発をする知識も技術もありません。
 全国の盲ろう者の意見を集約し、企業等に盲ろう者が使いやすいグッズを開発していただけるよう、働きかけることを目標としています。
 その第1弾が、盲ろう者が独力で体温が測れる体温計の開発です。
 コロナ禍で体温を測らなければならない機会が増えました。
 しかし、特に全盲ろうの盲ろう者が使いやすい体温計はありません。
 すでに、連絡協議会のML等で、皆さんの ご意見を伺いました。
 全盲ろうの盲ろう者が使えるようにするためには振動式の体温計が望ましいと思っています。
 協力していただける団体が見つかり、新型コロナウィルス第6波が、落ち着きましたら、この団体の担当の方と お会いすることになっています。
 多くの盲ろう者が独力で体温を測れる体温計の誕生を目指して頑張ります。

 2、必要な盲ろう者が点字ディスプレイを手に入れやすくするために

 何事も情報収集が大切です。
 情報社会から盲ろう者が取り残されないように、盲ろう者が独力で情報収取できる情報機器が必要です。
 点字の触読ができる盲ろう者にとって、点字ディスプレイ(ブレイルセンス等も含む)は必要不可欠です。
 しかし、点字ディスプレイは非常に高額で簡単に購入することはできません。
 現在、点字ディスプレイは地域生活支援の日常生活用具として認定されている自治体が多いです。
 しかしながら、様々な理由で点字ディスプレイが給付されない等、困っている盲ろう者が増えています。
 そこで、全国盲ろう者協会と合同で、必要な盲ろう者に点字ディスプレイが給付されるよう、自治体に要望したり、厚生労働省に後押しの お願いができれば と 考えています。
 その第1弾として実態調査を実施します。
 すでに、全国の盲ろう者友の会にはアンケートを お送りしております。
 この実態調査から点字ディスプレイを使用している盲ろう者が困っていることを洗い出し、自治体等に要望する際のポイントを絞り込んでいきます。
 皆さん、ご協力のほど、よろしくお願いします。

イ.盲ろう者の電話リレーサービス利用実証実験及びシステム等改善のための検討会(2)

副会長 門川 紳一郎(かどかわ しんいちろう)

 連絡協議会メールマガジン52号(2021年12月15日発行)でご報告した通り、日本財団電話リレーサービス(以下、財団)と全国盲ろう者協会の協力の元、盲ろう者の電話リレーサービス利用についての実証実験を進めています。
 実証実験では、いろんなタイプの盲ろうのユーザーにテスト環境用の電話番号またはテスト環境用を備えた実機で実際に電話リレーサービスを利用してもらい、改善点等を洗い出していきます。
 第1回目の実証実験では、点字ディスプレイを用いた電話リレーサービス利用の検証実験を行いました。
 続く2回目では、弱視難聴の庵悟さん(盲ろう者協会職員)が、財団が用意したiPadを使って、実際に電話リレーサービスを利用されました。
 なお、2回目の実験には、電話リレーサービス・カスタマーリレーションチームの二人に加えて、通訳オペレーションチームディレクターも立ち合ってくださいました。
 これは、盲ろう者の電話リレーサービスの利用には、機器のシステム改善だけでなく、電話リレー通訳のあり方についても検討して頂く必要があるためです。ハード、ソフトの両面から、良いサービスを開発していただくきっかけになるとよいですね。

 以下は、庵さんがまとめてくださった報告です。

電話リレーサービス実証実験(2回目 画面ユーザー編)報告

日時:2021年11月10日(水)13:00~16:45
場所:全国盲ろう者協会事務所会議室
参加者:(敬称略)
・日本財団:上嶋 太(カスタマーリレーションチームディレクター)、金城喜恵(電話リレーサービス・カスタマーセンターリレーションチーム)、根間隆行(通訳オペレーションチームディレクター)
・協会:門川紳一郎・通訳者1名、庵 悟・通訳者1名

内容:
画面ユーザーの盲ろう者のチャットを用いた電話リレーサービス利用に関する実証実験

1.体験者 庵 悟

・弱視難聴 50代男性
・視覚障害の程度
 視力 左0.08 右0.02
 視野狭窄 網膜色素変性症による。五円玉の穴から覗くきわめて強度の視野狭窄と
ぼやけ、まぶしさの症状あり。文字は、黒色背景・白色文字・24ポイントの大きさ
・ゴシック体で読む。
・聴覚障害の程度
 聴力 両耳とも約100デシベル
 耳掛け補聴器を両耳に装着。ワイヤレス式補聴援助システム(ロジャーペン)を使用して音声によるコミュニケーションをとる。ただし、電話は相手の声は聞こえても何を話しているかを理解することが困難。

2.実験内容

 庵のiPadの画面と同じ設定にした日本財団様が持参したひとまわり小さいiPadで実験を行った。
(1)オペレーターにアクセス
・iPadの電話リレーサービスアプリからオペレーターにつなぐために、専用番号とパスワード  を入力する。
・手話かチャットのいずれかを選択
・チャット画面が出たら、オペレーターからメッセージが届く。
(2)相手とのやりとり
・画面右上に電話番号を押す番号のテンキー画面が出たら、相手の電話番号をプッシュする。
・相手とつながり、入力画面が出てきたら、用件を入力すると、画面右寄りに表示される。
・相手の言葉が画面左寄りに表示され、確認したあと、返事を入力する。

3.実験を受けての感想と課題

(1)感想
・画面に表示されている文字情報が小さく読みづらかった
→文字の大きさだけでなく、操作するためのボタン表示が白黒反転になっていないのがあり、わかりづらい。
・相手の番号をプッシュするテンキーの画面の文字は大きく、白黒反転になっていたのでプッシュしやすかった。
・チャット画面の背景色や文字色を見やすいように設定できるのはよいと思った。
・チャット画面の文字の大きさを最大にして、いまの私の視力でかろうじて読めたが、もっと視力が弱いと読むのはとてもきびしいかもしれない。
・画面上のキーボードからの入力はとても時間がかかるので、相手を待たせてしまうと感じた。Bluetoothで接続可能なキーボードがあれば円滑に入力できるかもしれないが、これも時間がかかるかもしれない。
・相手の言葉をチャットの文字を読んで確認し、自分の言葉は序文の声を相手に届けられるとより早くやりとりができると思った。
・チャット画面で、自分の言葉(右側)と相手の言葉(左側)との間に太い境界線があると読みやすいかもしれない。
・視野がかなり狭いので、左端に相手の言葉と自分の言葉が時系列に並べて表示されるとよい。パソコン要約筆記のように、A/(相手の言葉)、自分/(自分の言葉)と表示されると読み取る速度も速くなるかもしれない。
・Windowsアプリのメモ帳のように、フォントサイズを変更したり、文章を右端で折り返しができるようにするとよい
・チャットに表示される文字の行が速く上に移動するため、読み切れないうちに上に上がってしまう。
→文字通訳アプリ「captionline」の利用者画面でスクロール速度を調整できる機能がついている。これを参考に文字の行が上がる速度を盲ろう者が調整できる設定ができるとよい。
(2)課題
①画面のレイアウトを見やすくする
→画面表示文字の大きさ、操作ボタンの表示の見やすさ・位置など
②チャット文字の大きさやフォントを盲ろう者がン自分で一番読みやすいサイズに調整できるようにする。
③チャット画面に表示される文字を見やすくする
④自分の声を相手に伝えられるようにする
⑤チャット画面の文字表示のスクロール速度の調整ができるようにする。

(報告文責…庵 悟)

4.みんなの広場(リレートーク)

「私と川柳」

若松 吾一(わかまつ ごいち) 山口県長門市 全盲ろう

 私が川柳を作るきっかけとなったTBS朝のラジオ番組「榎さんのおはようさん~!」では、毎週木曜日がリスナーからの川柳を紹介する日でした。その中で、静岡県のある人の川柳が毎週のように読まれていました。とても羨ましく、私もいつか番組の中で読んでもらえるようになりたいと 思っていました。 
 番組を聴き始めてから、3カ月くらい 経った頃、初めて作った「ぽろぽろと 流す涙に 騙されて」という川柳を1句、送りました。それが、なんと読まれたのです。
この時の感激は忘れられません。
 しかし 残念なことに、スポンサーの関係で、番組が終わってしまいました。それとともに川柳作りも終わりました。 
 再び作りり始めたのが、全盲ろうとなった1年後の平成26年です。これまでに書き溜めた川柳が400を超えました。これからも作り続けたいと思います。 
 みなさんも川柳を作ってみませんか。
 最後に自作川柳ーを添えて終わります。

 「寂しさと 孤独の中で いまを生き」
 「負けられぬ 意地で 始めた この暮らし」
 「強くない 弱み見せるの 嫌なだけ」
 「ゴミ出した まだよあなたを 出してない」
 「混浴と 聞いて出向けば 足湯だけ」
 「恋かしら どきどきするね 飲み過ぎだ」
 「コロナさん わたしに自由 返してよ」
 「コロナさん とてもいっしょに 暮らせない」 
 「あなたとは 別れたいのよ コロナさん」
 「この世から 消えてください コロナさん」

5.編集後記

編集担当 古川 竜一郎(ふるかわ りゅういちろう)

新型コロナが発生して3年目になります。
今もまた新しい変異株ができ全国的に感染が爆発的に増えています。
なかなか皆さんと会えず、外食もできずストレスがたまっています。
皆さんはいかがでしょうか?
そんな私が最近、料理を久しぶりに始めてみようかと電磁調理器を申請しました。
まだ届いていないのでインターネットでいろいろなレシピを調べて作ってみようと今からワクワクしています。
うまくできるかは謎です。(笑)

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【発行】

全国盲ろう者団体連絡協議会

【連絡先】

【連絡協議会ホームページ】

http://www.jfdb.org/

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